【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

薔薇と疑問の香り~下女の正体

 *


 しばらくしたのち、マリアの自室に戻ったアーニャはジル猫のご飯を扉越しにマリアに手渡すと、事務的な口調で矢継ぎばやに伝えた。

「今後は早朝七時と午後六時、わたくしが猫に餌をやりに参ります。マリア様の朝食は九時、昼食は正午と伺っておりますがこれまで通りでよろしいですね。夕食はその猫と同じ午後六時に持って参ります。お部屋にはパントリーがありますし、お茶の用意など他に何か用事がある時はその辺にいるメイドか侍従にお声掛けください。わたくし以外の者でも、この獅子宮殿に従事する者は誰もが仕事をきちんとこなしますので!」

 部屋の中に入りもせずに、そのまま目の前で扉をバタンと閉めてしまう。
 同じ獅子宮殿のメイドでありながら、ラムダとはこうも違うのか。

 ジルのご飯を手に持ったまま、マリアはまるで言葉の嵐でも去ったかのようにア然と立ち尽くすしかなかった。

「……ですって、ジル」

< 347 / 580 >

この作品をシェア

pagetop