【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「しゃーっ!!」
(とにかく嫌なやつだにゃ)

 ジルは背中の毛を真上に逆立てている。
 こんなに小さな仔猫にだって、人を見る目はちゃんとあるのだ。

「朝ごはん、すっかり遅くなっちゃったわね。さぁ食べて。お腹がすいているでしょうけれど、ゆっくりよ?」

 ジルの前にそっと食器を置くと、いつものようにどこぞの紳士さながら上品に食べ始める。ジルはとても高貴な仔猫なのだ。

 昼食までは、まだたっぷりと時間がある。色々な想いが頭の中をぐるぐると廻って、自室にこもっていては気が滅入りそうだった。

「ジルっ。ご飯を食べ終わったら、一緒に外の空気を吸いに行きましょう」
「うにゃ!」

 着替えはアーニャが戻る前に済ませている。
 マリアはジルに微笑んで立ち上がり、窓辺のドレッサーに向かうと、四つの引き出しのなかの一つを開けた。

 粗悪な作りだったパーツを丁寧に縫い直した猫の編みぐるみと、小さな白い箱が並んでいる。

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