【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

別れの足音




 皇城での諸国併合記念式典の開催日まで一ヶ月を切っていた。

 皇城中が慌ただしく準備に追われ、ありったけの侍従やメイドたちが一日中慌ただしく皇城内を走り回る有り様……ジル猫の手を借りたいほどに、なんて言うのも冗談では済まされないほどの多忙さが続いている。

 そしてジルベルトも、その式典に翻弄される者の一人として例外ではなかった。
 招待客リストの確認と修正、晩餐のメニューや食材の確認、楽団への依頼の確認など、日々の政務に上乗せられた書類がジルベルトの執務机に山と積み上げられた。

 マリアに「時間を作る」といは言ったものの。実際にはとてもじゃないが難しく、ジルベルト自身も嘆息を重ねる日が続いていた。


「にゃーっ」
(ねぇマリア。今夜も一緒に眠れる?)

 湯浴みを済ませ、ドレッサーで髪を梳かすマリアの足元にジルが体をすり寄せる。
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