【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ——廊下が泥だらけ……随分汚してしまった。

 急いで雑巾を持ち出し、裏口から階段付近の床を拭く。マリアがいる少し先の、店内に続く扉の向こうから聞こえる声はミアのものだった。

「あそこで猫の世話をしてたのはきっとマリアよ、間違いないわ」

 猫、と聞いて、耳をそばだてない理由はない。

「でね、あの猫ったら。私にぜんぜん懐かないから、食器を壊してやったの。そしたら……引っ掻いたのよ?! 私の手をっ!」

 ——ジルベルトのお皿を割ったのはミアだったのね。

 怒りが込み上げてくるが、その怒りの感情をぐっと胸の内側にしまい込んだ。

「だ〜か〜ら〜! 向かいの川縁に連れてって、捨ててやったの! あの小生意気な猫を柱の上に乗せてやったのは、この私の《《優しさ》》だと思って欲しいわ」

 ——あの子を、捨てたですって……?

 もう黙っていられなかった。
 溢れ出した怒りがマリアの全身からほとばしる。
< 83 / 580 >

この作品をシェア

pagetop