花婿が差し替えられました
決勝戦が始まった。
相手はクロードの友人で、第二騎士団所属のミハエルだ。
普段ヘラヘラ笑っていることが多いミハエルだが、人一倍努力家なのも、クロードは知っている。
(相手に不足なし、だな)
クロードは振りかぶって向かってくるミハエルの剣を受けた。
キンッと金属音が鳴り響き、会場を興奮の渦に巻き込む。
ーカンッ、カンッー
二度、三度と剣を交え、騎馬で近づいては遠去かる。
そのうち、カンッと鈍い音を立てて、剣が打ち落とされた。
瞬間、会場が水を打ったように静かになる。

「く…っ」
腕を押さえたのは、クロードの方だった。
「勝者、ミハエル!」
高らかに宣言され、再び会場が熱気に包まれる。
「フェリシー、旦那様が!」
クロードの勝利を疑ってみなかったアリスは、驚いて声を上げた。
一瞬悔しそうな顔を見せたものの、クロードは顔を上げ、ミハエルに歩み寄った。
そして握手を求め、彼の右手を高く掲げ、勝者を褒め称えた。
その顔は、とても晴れやかだ。

「旦那様…」
アリスは駆け寄りたい気持ちを抑え、成り行きを見守った。
クロードはそんなアリスに目をやると、ちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。
その笑顔に、アリスの胸はバクバクと高鳴る。
(ああ私、やっぱりあの人が好きだわ)
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