花婿が差し替えられました
(…砂吐きそう)
そんな二人を隣で見ていたフェリシーは、呆れながらも、しかしホッとした笑みを浮かべていた。

あの事件からすでに十日ほど経つが、クロードは護衛騎士を解任になったためずっとサンフォース邸に滞在していた。
所属は近衛騎士団のままになっているが、次の任務が決まるまで休暇扱いになっているのだ。
早朝の鍛錬は続けているが食事は全てアリスと共にとり、アリスが所用で出かける時は護衛の一人として付き従っている。

しかも、今までは全く近寄ろうとしなかったアリスの執務室にも顔を出し、何か手伝えることはないかと尋ねる始末。
いいからゆっくり休んでいてくれとは言ったのだが、元来クロードはのんびりする性格では無いらしい。
伯爵家の執務や雑務的なことも何か手伝えたらと、秘書のラウルや家令のマルセルにまで声をかけている。
せっかく申し出てくれているのだから、と、アリスはクロードに何か頼むことにした。
彼はテルル語が堪能だったことを思い出し、テルルの貴族や商人とのやり取りや翻訳を頼むことにしたのである。

(でも、やっぱり旦那様はこちらの方がずっと合ってるわね)
執務に従事している彼も素敵だが、馬に跨って剣を振るう騎士姿のクロードは圧倒的に格好良い。
やはり彼は、天性の武人なのだろう。
< 137 / 156 >

この作品をシェア

pagetop