花婿が差し替えられました
アリスはクロードの顔を見上げた。
クロードは傷ついたような顔で薄く笑っている。
「白い結婚の証明だって…。貴女は、こんな証明まで受けようとしてたんですか?」
封筒の中身は、いわゆる離縁に必要な書類だった。
夫婦の署名と、それを証明する人物の署名。
そして、『白い結婚』の証明書。
つまり、アリスはこの証明書を記入してもらうために然るべき所で自分の純潔を証明しなければならない。
まるで泣き出しそうなクロードの顔に、アリスの胸がギュッと苦しくなった。

「違うの…。ごめんなさい、クロード」
アリスはクロードに近づき、ギュッとその両手を握った。
「私、苦しくて。貴方が好きで。でも貴方の心はずっと王女様にあると思ってて…」
「どうしてそんなこと…。護衛は任務で、色恋とは全く関係ない…」
「だって、レイモン様から王女様は貴方の初恋の人だって聞いて。それに髪飾りだってショールだって、王女様が貴方に贈られたものだって…」
「バカな…。あれは勝手に王女が買ったものだとさっきも説明したじゃないですか」
「だって知らなかったんだもの、そんなこと。貴方はいつだって王女様第一だったし、だから私のことなんて邪魔だろうと私…」
「邪魔なわけないでしょう?でも、じゃあもしかして貴女は…、王女に嫉妬したんですか?」
「そうよ。嫉妬して、苦しくて、貴方から逃げようと思ったの」
「アリス…!」
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