花婿が差し替えられました
実際、アリスは夫という存在に必要性を感じていなかった。
伯爵家にはずっと伯爵家を支えてくれた優秀な人材がたくさんいる。自分が采配を振るって彼らが手助けしてくれれば、それで十分だ。
夫として迎えた男に口出しされたりしたらかえって迷惑だし、夫として立てなくてはならないのも面倒だ。

しかしやはり、女伯爵として立つためにも結婚は必要なのだろう。
非常に理不尽ではあるが、まだまだこの世の中、男も女も結婚することで一人前扱いされることが多いからだ。
それにサンフォース伯爵として、自分は後継者をもうける必要もある。

現在王国では国家事業として、汽車、汽船の開発、生産に取り組んでいる。
海に面した領地を持つサンフォース家には造船所があり、最近国から造船の公共事業をもぎ取ったところである。
そのため王都からサンフォース領に鉄道を敷く布石にもなった。
鉄道を敷くためにもちろん近隣の領主との仲も良好で、また、造船事業で提携している領主ともよい関係だ。
もちろん事業で敵対している家もあるし、成功者であるサンフォース家を妬む者、恨む者もいるだろう。
しかし今のところ表立って攻撃してくるようなこともない。

そこでアリスは事業で提携でき、尚且つ現在も良好な関係の貴族の中から婚約者を選ぶことにした。
伯爵家より格上なら程よい緩衝材になって尚良いと思う。
そのため、今までは事業の話だけのために参加していた夜会にも、違う目的で足を運ぶようになる。

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