花婿が差し替えられました
そんな中、アリスは両親の愛情を一身に受け、賢く健やかに成長した。一を聞けば十を知り、岩に水が染み込むごとく知識を吸収していく令嬢に、家庭教師たちは皆舌を巻いた。
そして挙って進言した。
『当主には、アリス嬢を立てられませ』と。

そうしてサンフォース伯爵はひとり娘を後継に立てる意思を表明し、その配偶者を選ぶことにした。
しかしそれも政略に重きを置かず、あくまで娘が気に入った男を迎えるつもりだと宣言する。
アリスを大切に想う父親は、彼女の意思を尊重したかったのだ。

だが、親の想いをよそに、娘の方はまったくもってドライであった。
「結婚するならサンフォース家の事業に役立つ家のご子息を。それ以外の要望は特にありませんわ」
可愛い娘の口からそんな言葉を聞かされた両親は驚愕する。
いくら事業に夢中な娘であってもそこは花も恥じらう年頃の乙女。
恋に夢見て、好きな男性の花嫁になることを望んでいると思っていたのに。

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