花婿が差し替えられました
馬に鞍を乗せ、鎧に足をかけた時、厩舎の外から足音が聞こえて来た。
「クロード、どこへ行くの?」
ルイーズ王女と、騎士仲間のうちの数人だった。
何故こんな早朝に王女が厩舎に現れるのか不思議に思ったが、もしかしたらクロードの行動を見張らせていたのかもしれない。
その証拠に、騎士仲間たちがバツの悪そうな顔でクロードを見ている。

「ちょっと遠乗りに行って来ます。私の愛馬も運動不足なようなので」
クロードはそう言って笑ったが、王女は顔を強張らせたまま、「じゃあ私も連れて行きなさい」と命令した。
「しかし、私は休みをもらったはずでは…」
「休み中だからといって、離宮を離れるのは許しません。その間に私に何かあったらどうするつもりなの⁈」
「しかし王女様、護衛騎士はクロードの他にもおりますから…」
そう言って間に入ったのは、一番年長の護衛騎士だ。
しかし王女は冷ややかにその騎士を睨みつけ、そしてクロードに目を向けた。
「側で私を守るのがあなたたちの仕事よ。すぐに駆けつけられない場所に行くのは絶対に許さないわ」

王女がこう言い出したからには、多分クロードが戻るまで諦めないだろう。
クロードは項垂れ、馬を厩舎に戻すと、大人しく自室に帰った。
それからのクロードは、休暇を取った二日間、体調不良を理由に部屋から一歩も出なかったのである。
< 83 / 156 >

この作品をシェア

pagetop