花婿が差し替えられました
コラール家の三男レイモンは、アリスの父にクロードとアリスの夫婦仲は悪く、離縁は秒読みだと伝えたらしい。
それにクロードは二年後には王女について隣国テルルに行ってしまい、もう帰ってくることはないことも。
だからクロードとは速やかに離縁させて、新たに自分と縁を結び直させて欲しいと訴えに来たのだ。
自分なら両家の事業に役に立つ人間だし、何より、ずっとアリスの側にいてあげられるからと。
レイモンには婚約者がいるはずだと問いただせば、彼女とはすでに破談にしたと言う。
父はレイモンの話に呆れ果て、空いた口も塞がらなかったらしい。
次男と婚約破棄して四男と結婚し、また離縁して三男と結婚するー。
一人の娘が四兄弟のうち三人の男と縁を結ぶなど、そんな話、聞いたこともない。
万が一サンフォース家がそんな話にのったら、醜聞どころの騒ぎではない。
事業でも信用をなくすだろうし、恥ずかしくて社交界になど顔を出せなくなるだろう。
何故、レイモンはそんな厚顔無恥な提案をしてきたのだろうか。
こんなバカバカしい話を真剣に話すレイモンに、父は薄ら寒くなったという。

「アリスは大事な娘だ!そんな、猫の子のようにあっちとくっつけたりこっちとくっつけたり出来るものか!」
怒鳴りつけてやると、レイモンは「諦めない」と言い捨てて出て行ったらしい。
その自信は、一体どこからくるのだろうか。
「あの家の息子は次男も三男もおかしいぞ、アリス。早まったかもしれないな」
呆れ顔の父に、アリスも頷くしかなかった。
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