その恋、まぜるなキケン

同居

翌々日。


検査でも異常がなかった真紘は無事に退院することになった。


今日は病院からこのまま旭のセーフハウスに向かい、しばらくそこで暮らすことになっている。


病院の駐車場には綾人が真紘の見送りに来ていた。


「何かあったらすぐ連絡すること。とにかく自分の安全だけを考えること。それから、」


まだまだ続きそうな綾人に、クスクス笑いながら真紘が待ったをかけた。


「も〜!綾人は心配性なんだから!大丈夫だよ。……それよりも、なんかごめんね。こんなことになって……」


しばらく旭のセーフハウスで暮らしてほしいと、綾人から話をされた時は戸惑った。


いくら真紘(じぶん)の安全のためとは言え、元カレの家に泊まるのは罪悪感があったし、綾人の口からそんな提案をさせてしまったことに申し訳なさを感じた。


それなのに、綾人はこうして快く送り出してくれるのだ。


本当に、なんてデキた人なんだろうと真紘は思う。


「大丈夫。真紘の安全が第一だから」


綾人は自分の額を真紘の額に重ね合わせ、2人は目を閉じてしばらくそのままでいた。


旭は車に寄りかかりながら、すっかり2人きりの世界に浸っているその様子から目を逸らした。


こっちにまで流れてくる甘い空気に息が詰まりそうで、タバコに火をつける。


抱き合ったり、キスなんかをするよりもよっぽど雰囲気がある。


本当に絵になる2人だと思った。


話を終えて、真紘が旭の方へ向かってくる。


「巻き込んで悪い。まだしばらく会うことになりそうだな……」


「ううん……私こそ迷惑かけてごめんね。お世話になります」


真紘は軽く会釈して旭の車に乗り込んだ。
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