その恋、まぜるなキケン
マスターはそれ以上何も言わず、しばらく沈黙が続いた。


そして真紘はハッと思い出したようにスマホを確認する。


特に連絡はきていない。


あれから30分以上経っているが、亮太は一向に店に現れない。


やはり、何かあったと考えるのが自然だ。


真紘は荷物をまとめて立ち上がり、扉の方へ歩いた。


「ちょっと真紘ちゃん!?どこへ行くの!?」


「私戻ります!ご馳走様でした!お代はこれで!」


真紘はカウンターに1万円札を置き、入り口へ急ぐ。


扉を開けると、さっきの門番が「ドウシタ?」と驚いた顔をした。


真紘は頭を下げてそのまま階段を駆け上がった。


「あ、ちょっと待って!外は危ないんだからッ!」


マスターの叫びは届かず、真紘はそのまま飛び出して行ってしまった。


彼は慌ててスマホを取り出し、ある人物に連絡を取った。


「もしもし?大変なの、真紘ちゃんが——!」


その頃、真紘も夜の街を走りながら耳にスマホをあてて電話をかけていた。


「亮太くんお願い出てッ!」


『おかけになった番号は電波の届かない——』


真紘は電話を切った。


辺りを見回しても、それらしい人物はどこにもいない。


亮太の居場所が分からなければ助けにも行けない、何も始まらないのに。


その時、腰のあたりに硬い何かが突き刺さるように押し当てられた。


「騒ぐなよ。大人しく歩け」


今自分に銃口が向けられているということは、真紘にもなんとなく分かった。
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