その恋、まぜるなキケン
「大丈夫ですって。何かあったとしたら、アニキに連絡こないのは逆に変だし。スマホ水没して壊れたとか、きっとそんなんですって。今頃携帯ショップで交換中ですよ」


仕事中ずっとそわそわして心ここに在らずな状態の旭に、亮太は声をかけ続けた。


とはいえ、根拠のない励ましは気休めにもならないことは分かっていた。


家に帰って、旭は腕を組んで部屋の中を行ったり来たりウロウロしながら考えた。  


真紘の勤務先に連絡して、緊急連絡先にかけてもらった方がいいのか。


あるいは警察に通報するか。


その前に綾人に相談してからが良いのか……?


とにかくじっとしてなどいられなくて、真紘が行きそうな所を片っ端から探しに行こうと玄関の扉に手をかけた時だった。


ガチャリと鍵が開いて、外から真紘が入って来た。


「わっ!ビックリしたぁ。脅かさないでよ!どこか行くっ……」


真紘はまさか扉を開けてすぐに旭が立っているとは思いもしなかった。


それだけでも心臓が止まりそうになるほど驚いたのに、玄関に足を踏み入れた瞬間に旭に強く抱きしめられたものだから、状況を理解できていない真紘はとりあえず(まばた)きをするしかなかった。


「えっと……これは一体どういう……?」


「連絡つかなかったから、なんかあったのかと思った……無事で良かった……」


「ごめん……充電切れちゃったみたいなんだけどそのまま先輩と遊びに行くことになって。旭きっと仕事中だろうし、私の方が帰るの早いかなって思って連絡しなかったの……」


旭の声は泣いているのではないかと思ってしまうほどとてもか細く震えていた。


なんだかよく分からないが、充電がなくなったのを放っておいたせいで旭に相当心配をかけてしまったらしい。
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