ー野に咲く花の冒険譚ー


『俺が使っちまってるけどな! はは,いらっしゃいませぇ。花つきの母に,王にその人生を食われている哀れなお姫サマ』



その声の主は僕らの来訪を知っていた。

それどころか心待にしていたようで,なのに待っていたのはきっと。

僕らではなく,僕。



「どーぉでもいいけどさー。おっさん誰ですか~」

『ひでぇな,騎士とは流石なってない。俺はまだ32なんだよ』



おっさんじゃないか。

そう思う僕の周りで,隊員が突如遮ったアイザに目を剥く。

その様子に恐怖すらした隊員の一人は,アイザの肩を強く掴んでいた。

アイザはびくともしない。

隊員にはとんだ奇行に映ったのかもしれないが,僕とタルトには違う。

ピリピリとした空気に,2人とも横目でアイザを見た。



『ドン=ブラッド=ボビー·アーネット。研究者アドルフ·プッチーニ·ドルトルの兄にして花の最初の摘発者,ローニャ·プッチーニ·ドルトル医師の末裔さ』
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