再会は魔法のような時を刻む~イケメンドクターの溺愛診察~【リニューアル版】
そして……
先生は、私に躊躇なくキスしようとした。


「止めて下さい! 先生、嫌っ!」


必死に抵抗して、先生の頬を少しだけ引っ掻いてしまった。


その時だ――
電話の呼び出し音が部屋中に鳴り響いた。
先生は我に返って、慌てて胸から携帯を取り出した。


「はい……わかった、すぐ行く」


小刻みに震える私に対して、


「怖がらないで。僕は愛莉ちゃんのこと、諦めないから。僕は、君以外は愛せないんだ。あの月のように、とても綺麗に輝く君を……ずっと……見てる」


そう言って、急いで部屋から飛び出していった。
一切、後ろを振り向かずに。


緊急の要件だったんだろう。
とても不謹慎だけど、良かった……と思ってしまった。もしあの電話がなかったら、私、坂井先生にキスされてたかも知れない。
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