真実の愛は嘘で守って・・・。
琉偉とこんな関係になったのは約1カ月前。

体調も良くなって、学校に通い始めた私だったが、実際はダルさが抜けなくて、ずっと喉が渇いている感覚があった。

だけど、あの夢のせいで楓から血をもらうのが怖くて、今までより飲む量が少なくなった結果、その反動が来てしまった。

事もあろうに学校で、激しい吸血衝動に襲われた私は、とにかく人目を避けられる北棟へ向かい、そこの特別教室に逃げ込んだ。

どうしようもない渇きが抑えられず、自分の腕に牙を立てて血を補給してみたが、そんなのは何の意味もなくて、さらに渇きが激しくなる。

そしてそんなところを、昼寝に来た琉偉に見られてしまった。

琉偉はすぐに私が血を欲していると察して、自分の血をくれようとしたけど、楓以外の血を飲みたくなくてそれを拒んだ。

そんな私に琉偉はこう言った。

「そんな飢えた状態じゃあ、従者の人間くん殺しちゃうんじゃない?」

全てを見透かしたような言葉に衝撃を受ける私を、面白がるように琉偉は続ける。

「あっ、もしかしてそれが怖くて飲めなかったの?」

図星を突かれ琉偉を睨むと、防衛本能なのか敵意が力となって琉偉の頬を傷つけた。

傷口からは赤い血が伝い、生唾を飲む。

「図星だ。人間くんが大事なんだね」

そう言うと琉偉は私を引き寄せて「じゃあ、なおさら僕の血をお飲み。それが君の大事な人のためだよ」と耳元で囁いた。

その言葉が私の中にあった楓のためという認識を変えさせ、琉偉に言われたとおり彼の血を貪った。

そしてその日から週1、2回、今日のように琉偉から血をもらっている。

ある意味、発作が起こったのが学校だったことと、見られたのが琉偉でよかった。

従者が通うナイトレイ校と私たち貴族が通うブルーム校は、従者がすぐに主人の元に駆け付けられるよう校舎が隣ではあるものの、従者が来るのは主人が呼んだ時だけ。

つまり、私が呼び出さない限り楓がこちらの校舎に来ることはなく、秘密は守れる。

楓以外の血を吸いたくなかったのは、それ以外が不味いからという理由だけじゃない。

楓がそのことを特別に感じていたからだ。

だから楓には知られたくない。

ずっと血だけでも自分だけが私の特別だと思っていてほしい。

なのに、そんな願いすら叶わないなんて。

「優李、様?」

聞き慣れた声に名を呼ばれ、反射的に振り向くと、いるはずのない楓が立っていた。
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