真実の愛は嘘で守って・・・。
小夜は琉偉に言われたとおり俺を庭に案内し、その中でも特にお気に入りだという、池に夜空が反射して、まるで星が咲いているかのような星の庭に連れて行ってくれた。

「すごい。綺麗ですね」

「喜んでいただけてよかったです。先程は嫌な思いをさせてしまいましたので」

「あぁ、全然大丈夫です。むしろ、人間の僕にはああいう扱いが普通かと思いますし」

そう、優李といる時以外は屋敷にも学校にも、人間の俺に居場所なんてない。

「そうですね。私も同じような境遇なので。
楓さんも私のことは聞いたことがおありでしょう?
ヴァンパイアと人間の混血、ダンピールの従者がいると」

「はい。それが小夜さんだとは知りませんでしたが」

弓塚 小夜《ゆみづか さよ》。

人間の俺と同様、嫌われ者の対象として学校で噂となっていたダンピールの従者。

まさか、それが琉偉の従者だとは思わなかったけど、その特徴的なオッドアイでこの人なのだと察した。

「優李様はお優しいですね。
この目を見て私がダンピールだと察したでしょうに、全く態度をお変えにならなかった」

「それは琉偉様も同じです。人間の僕に対しても、とてもフレンドリーに接してくださいます」

「私たちは主に恵まれましたね」

「確かに。献上されたのが優李様の元でなければ、僕はとっくに死んでたでしょうし。
あっ、すみません、つまらないことを言ってしまいました」

「いえ、私も同じようなものです。
私の母は踊り子をしていて、呼ばれた先の下級貴族のヴァンパイアの父と恋をして私を出産しました。
私と母は父が用意してくれた隠れ家で静かに暮らしていましたが、
ある時、それが父方の祖父にバレて、母は殺されました」

俺にとってその話はとても他人事には思えなかった。

まるで、未来の自分の結末を聞かされているような気分だった。

「私はなんとか父の嘆願により助かりましたが、従者としてどこにも選ばれなければ殺すと言われてきました。
必死に特訓し、優秀な成績を取ってなんとか選ばれようと頑張りましたが、ダンピールを選ぶ方などまずいなくて。
正直、もう諦めかけていた時、琉偉様だけが私を選んでくださいました。
だから私、琉偉様のためならなんだってしようと思って・・・」

「琉偉様のこと、とても大切に想ってらっしゃるんですね」

「はい。あっ、もちろん主人としてです」

そうやって少し焦る様子を見て、この人もまた主人への敬愛ですら口に出す際は気をつけねばならない、自分と同じ危うい立場の人間なのだと理解する。
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