真実の愛は嘘で守って・・・。

【楓の幸せ】Side優李

顔では笑って、言葉でも琉偉の言葉に同意した。

だけど、心の中は急に崩れた天候のように荒れていた。

楓が私以外とキスしてた。

しかも、状況的に見たら楓から?

なんで?私のことが好きなのに、なんであの子とキスしたの?

それとも、もう好きじゃなくなった?

嫉妬に心を支配されながらも、何とか笑顔でやり過ごし、気づけば自分の部屋に戻ってきていた。

「今日は早く休みたいから、楓ももう行っていいよ」

疲れた。もう何も考えたくない。早く眠りにつきたい。

なのに楓は「血をあげてから行く」と言いソファーに座った。

そんな気分じゃないけど、血が足りず吸血衝動が制御できなくなるのも怖いので、手から少量だけもらうことにする。

「もういい、ありがとう」

「うん」

なんか、上手く楓の顔を見れない。

楓はそのままドアの方へ向かったが、途中で足音が止まった。

「どうでもいいと思うけど、あれは小夜さんが倒れそうになって、偶々口が当たっただけだから。
変な誤解されたままなの嫌だから一応言っとく。じゃあ、おやすみ」

こちらを見ることもせず、それだけ言って楓は出て行った。

残された私は気が抜けてソファーにごろんと倒れる。

よかった。楓からしたんじゃなかった。

そもそもキスじゃなくて、事故だったし。

わざわざ説明していくなんて、やっぱり楓が好きなのは私だ。

だけど、私と違って小夜さんと本当に楓がキスしていたとしても、楓が殺されることはきっとない。

それに、嫉妬というものが、こんなに苦しくて悲しいことだと今日初めて知った。

楓が私を好きということは、これから先、楓は何度もそれを味わうことになる。

今まで私の側にいることが楓にとっても幸せだと思っていたけど、違ったのかもしれない。

楓を手放すことが楓のためなんじゃないか、そう思うとそれが正しい気がして、この日は結局眠れなかった。
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