隠し味
 バッタン!

 ひんやりとしたコンクリートに背が打ち付けられると同時に、仰向けになった俺の喉には鉄の味が伝っていく。

 ─食べれば隠し味がわかるから─

 ああそうか、そういう意味か。
 先ほど理解できなかった美嘉の言葉の意味が今はっきりとわかってしまった。
 隠し味は、俺の血の味だ。

「グハッ!」

 俺の上にまたがった美嘉は、わたあめの棒から手を離さずに、苦しむ俺の喉へとさらに深く押し込んでくる。
 わたあめの棒、思わずそんな言い方をしてしまったが、美嘉が握りしめているものは包丁の()だ、間違いない。彼女はふんわりと膨らんだわたあめの中に刃物を隠し、リボンと両手でその柄を覆っていたのだ。
 花嫁にも似た格好をしていたのは、おそらく真夏にする手袋を不自然に思われないためのカモフラージュ。ウエディングドレスにウエディンググローブ。殺人の証拠になってしまう指紋を残したくないからなんて、一体誰が気付けただろうか。

「ゴボッ……グホッ!」

 息がしづらい、視界が歪む。
 それなのに気味悪く笑う美嘉はしっかりと見えてしまって、涙が出るくらい悔しく思った。
 本命でもなんでもない、遊びで付き合った女に殺されるなんて。

 意識を失うその瞬間、美嘉が俺の耳元で囁いた。

「修二くん。私の犯した罪はね、数年にわたり一度だってバレたことなんかないの。これであなたが七人目。安らかに眠ってね」
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