ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ねぇ、ジャン。気分転換にジャンのギターが聴きたいな」


 チャコのその望みに、ジャンは嫌な顔一つせず、ギターを演奏して聴かせてくれる。やはりその音を聴けば自然と心が満たされていった。


「やっぱりジャンのギター大好き。私も弾けたらな……ジャンの演奏で歌いたいのは変わらないんだけどさ、でも自分で演奏できたらもっと伝わるのかなーって思った」


 思わずチャコがそう漏らすと、ジャンは突然自分のギターをチャコに持たせてきた。チャコはそれを慌てて受け取る。楽器の値段などわからないが、それでもこれはジャンにとって大事なものだろう。そんなものを手にすれば、緊張で身体に力が入ってしまう。壊してしまわないようにそっと、けれど落としてしまわないようにしっかりと抱えた。


「ジャン?」


 救いを求めるようにジャンを見つめてみるが、ジャンはただ微笑みを返し、そしてなぜかその場に立ち上がってしまった。

 ギターを持っていてチャコは動けない。このまま置いてかれでもしたら困ると、内心焦りはじめていたら、ジャンはチャコのすぐ近くに座り直した。チャコのすぐ真後ろに。チャコを抱え込むような形で座り込んでいる。


「へ!? ジャン?」


 チャコの背中にジャンの体が密着している。正面から抱きつかせるあの体勢もとても恥ずかしいが、ジャンに抱きしめられているようなこの体勢はそれ以上に恥ずかしかった。

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