ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ねぇ、歌どうだった?」


 チャコは移動してすぐにその言葉を口にした。二人からの感想を早く聞きたかったのだ。まだあの歌がチャコとジャンで作ったものだとは話してないから、素直な感想を聞かせてくれるはずだ。


「それ、もうずっと言いたかった! すっごいよかった! 確かに知らない曲だったけどさ、チャコに合ってるなーって思ったんだよね。めちゃくちゃ楽しい気持ちになった」
「わかる。私も同じこと思った。すごくチャコっぽくてよかったよ」
「よかったー」


 恵と由香からポジティブな感想が出てきて、チャコは心の底からほっとした。チャコは約束通り、恵が知りたがっていたことを話すことにした。


「あれね、ジャンと私が作った歌なの。歌詞も自分で考えた」
「え!? マジで? すごいじゃん! いい曲だなって思ったよ」


 恵は随分と興奮している。その一方、由香は最初だけ驚いた表情をしたものの、すぐにチャコに微笑みを向けてくれた。そして、恵が落ち着きを取り戻したところで、由香が静かに話しはじめた。


「ねぇ、チャコはさ、歌の道目指そうとは思わないの? 無責任なことは言えないけどさ、チャコにはその道があるんじゃないかなって思ったよ」


 まさか由香がそんなことを言ってくれるだなんて夢にも思わなかった。いつもチャコの味方でいてくれているのはわかっていたけれど、そういう道を勧めてくれるとは思っていなかった。


「由香……ありがとう。実はね、挑戦してみたいなって思ってるんだよね。ジャンにもその話をしたかったんだ」


 ジャンと二人で曲を作りはじめたころから考えていた。だからこそ、文化祭のステージにも立ったのだ。そして、そのステージを経た今、チャコはその想いを強くしていた。初めて見つけたチャコの夢だ。


「チャコ、私も応援する! 私と由香が最初のファンだからね!」


 とても心強い味方だ。チャコは嬉しくて、二人に抱きつき、何度も「ありがとう」と言った。友人からの応援に、チャコは絶対にこの夢を叶えたいとその決意を強くした。
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