ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「そう! もうね、めちゃくちゃきれいなんだよ。あんなギターの音初めて聞いた! 毎日でも聴いてたいもん」
「へー。そんなにすごいのなら私も聴いてみたい」
「……え」


 由香がジャンの演奏を聴くところを想像して、チャコはなぜだか面白くないと思ってしまった。あの素晴らしい演奏を友達に聴いてほしい気持ちも確かにあるのに、なんだかモヤモヤとした気持ちにもなる。それが表に現れて、チャコは眉間に皺を寄せて渋い顔をしていた。


「すごい顔になってるけど……そりゃあ、そんだけ自慢されたら聴いてみたいでしょう。私も聴いてみたいよ。てか、その天使の顔が見てみたい」
「えぇ……」


 恵にそう言われるとますます面白くない。


「だから顔よ……」


 恵に眉間を指でグイっと押された。


「チャコは天使さんのこと独り占めしたいって感じかな?」
「独り占め……あー、なるほど! そうか」


 由香の言葉が実にしっくりときた。チャコはジャンのことを独り占めしたかったらしい。確かにあれを他の人に見せてしまうのはなんだかもったいない気がする。

 チャコが一人納得していれば、恵と由香は顔を寄せあい何やら話しはじめた。


「ね、由香、これは超強力なライバルが現れたんじゃない?」
「そうだね。山下くんが不憫」
「不憫言うのはやめたげよう? そもそも天使に相手にされなきゃ始まらないんだし」
「それもそうだね」
「ねー、何こそこそ話してるの?」


 チャコを差し置いて、恵と由香が小声で話をするものだから、チャコは面白くなくてすぐさま突っ込んだ。

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