ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「いや。振られたなら潔く諦めるよ……はあー、あいつのことそんなに好きか?」
「……うん」


 ジャンへの気持ちは今もまだ変わっていない。ずっと変わらぬままだ。


「そんなに想い続けてるんなら勝てねーな。ま、俺のほうがもっと長く想い続けてたんだけどな」
「ごめん……」
「いいよ。気にすんな。お前のこと困らせたいわけじゃねぇから。俺もあのころはまだガキでずっと素直になれなかったし……」


 気まずくならないようにしてくれているのがわかる。航平は随分と大人になったようだ。


「あいつのこと、まだ何もわかんねーのか?」
「うん……あ、でも、名前がわかったかもしれない」
「え? 何て名前なんだ?」
「えがわ」


 確証があるわけではないが、由香の推理なら確かな気がしていた。


「えがわ……えがわ? あ、そうか、あのときの……ごめん、チャコ、また連絡する。お前明日までこっちいるんだろ?」
「え、うん」
「何時までいる?」
「昼過ぎかな」
「わかった。今日はありがとな。じゃあ」


 ジャンの名前を聞くと航平はなぜか急に立ち去ってしまった。最後の会話からして明日までにまた連絡がきそうではあるが、突然のことにチャコは首を傾げるばかりだった。
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