ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「航平、何か話あるんでしょ?」
「あー、うん……あのさ、お前まだあいつ探してんのか?」


 あいつとはジャンのことだ。思わぬ問いかけにチャコは一瞬言葉に詰まった。


「っ……うん」
「そうか……なあ、俺、お前の歌好きだし、お前の夢は応援してる。でも、あいつがいなくなってもう二年だろ? そんなやつのために頑張るのはもうやめたらどうだ? 自分のためだけにやれよ。大事なときにそばにいてくれないようなやつを想っててもつらいだけだろ?」


 チャコのことを心配して言ってくれているのだろう。その気持ちはすごく嬉しい。けれど、チャコにジャンを諦めるという選択はできないのだ。何て返せばいいかわからず、チャコは黙り込んでしまった。


「……」
「……俺……。俺さ、お前が好きなんだよ。ずっと前から好きだった」
「え……」


 突然の告白にチャコは驚き、目を見開いた。航平にそんなふうに思われていただなんて露ほども思っていなかった。チャコにとって彼は大事な友人だし、彼も同じだと思っていた。


「俺、仕事の関係で関東に移ることになったんだよ。俺ならずっとそばにいてやれる。お前が傷ついてるときに付け入るようなことはしたくなかったから、ずっと言わなかっただけで、今でもまだお前が好きなんだ。なあ、だから俺と付きあわねぇか? 大事にするから」


 真剣に告白してくれているのだとわかる。チャコのことを本気で想ってくれているのが痛いほど伝わってくる。きっと彼の手を取れば本当に大事にしてくれるだろう。だが、チャコが取りたい手はこの手ではないのだ。彼の想いに応えられないのが心苦しくてたまらない。それでもその真剣な想いに、チャコも真剣に返さねばならないと思った。


「……航平……ごめん、ごめんなさい! 全然気づかなかった……航平のことは友達として好きだよ? でも、そういう好きじゃない……ごめん」
「……はあー。やっぱだめかー」
「ごめん……」


 項垂れる航平にチャコはもう一度謝った。今のチャコにはそれしか言えなかった。

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