ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~

2. ジャンの苦悩

 ジャンのぬくもりが身体中に広がっていく。ずっとずっと夢見ていたぬくもりだ。本物だと確かめたくて、チャコは何度も呼びかけた。


「ジャン? ジャン……ジャンっ……ふっう、ジャン……」


 涙が溢れて溢れて止まらない。ボロボロと泣いていたら、ジャンが少し身体を離して、あの天使の微笑みを浮かべてチャコを見つめてきた。


「チャコ」


 ジャンの放った声が空気を振動させて、チャコの耳に伝わってくる。ジャンがチャコと呼んでくれている。チャコは胸がいっぱいになって、大粒の涙をこぼした。


「うっく……ジャンっ……ジャン、うぅーっ……ジャン、ごめっ、ごめん、なさい……ジャン、ごめんねっ……」


 ずっとずっと謝りたかった。ジャンを苦しませたことを謝りたかったのだ。


「なんでお前が謝るんだよ。謝るのは俺だろ。ごめんな、チャコ。遅くなってごめん。ずっと会いたかった」
「ジャンっ……私もっ、会いた、かった」


 ジャンはもう一度強くチャコを抱きしめると、チャコの頭を優しく何度も何度も撫でてくれた。

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