ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「それからもう一つ」
「もう一つ?」
「俺はあの告白の返事は保留にしてたつもりなんだ。お前を振ったつもりはない。だから、今日から俺の彼女になれ」


 チャコは嬉しくて嬉しくてたまらなかった。勝手に顔が緩んでいく。


「ふふっ。なんで命令口調なの?」
「嫌なのか?」
「嫌じゃない。私をジャンの彼女にして?」
「うん。絶対に放さないから。一生俺のそばにいろ」


 随分と男らしい口調ですごいことを言っている。でも、ジャンの強い気持ちが伝わってきてとても嬉しい。


「うん、一生ジャンのそばにいる!」
「チャコ、好きだ」
「っ!?」


 好きだと言われるのがこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。チャコの気持ちもより一層強くなったような気がする。


「ジャン……ジャン、大好き!」


 チャコはジャンに勢いよく抱きついた。もう言葉だけでは言い表せなかったのだ。


「チャコ」


 耳元で呼ばれてそっとジャンの顔を窺うようにすれば、すぐにジャンの指がチャコの唇に触れてきた。とても懐かしい感触だった。


「あのときはいつか戻ってくるのつもりでキスした。今度はずっと一緒にいようの意味でしたい」


 いつもの接触だと思っていたら違ったらしい。キスというワードにチャコの心臓はドクドクと大きな音を立てている。


「っ……ジャンはすぐドキドキさせる」


 思わず文句を言うが、ジャンはまったく気にしていないようだ。


「チャコ?」
「……いいよ」


 目を閉じたらすぐに、一度だけ感じたことのある柔らかいものがチャコの唇へ触れてきた。



「チャコ、ありがとう。お前が好きだ」


 チャコは恥ずかしくて、嬉しくて、もう一度ジャンに抱きついた。
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