ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ジャンの歌声好き」
「俺もチャコの歌声が好きだよ」
「あのね、実はね、ジャンが高校生のときに歌ってた動画を見たの。でも、そのときの歌い方とは全然違うからびっくりした」
「は? 動画なんてどこから……」


 ジャンは大層驚いた顔をしている。チャコがジャンの過去を知っているだなんて夢にも思っていなかったのだろう。


「ジャンの名前を解明したら、そこにたどり着いた」
「名前って……」
「江川悠輝、でしょ?」
「なんで知って……」
「名字はジャンが教えてくれたじゃん。ギター弾いて」
「え……あれでわかったのか?」
「うん。友達が解明してくれた」
「マジか……絶対わからないと思ってた」


 やはりジャンはあれで名前をわからせようとは思ってなかったらしい。


「下の名前まで知ってるのはなんでだよ?」
「ジャン、同じクラスに同じ名字の人いなかった?」
「え? あー、いたかな」
「その人、航平の友達なの。それで航平伝いにジャンのこと聞いた。下の名前もそれで知ったの。江川って名字がわかったから、そこに繋がったんだよ」


 それを言った直後、急激にジャンの周りの温度が下がったのがわかった。

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