ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「初めまして。江川悠輝と申します。千夜子さんとお付き合いさせていただいております。本日は結婚のお許しをいただきに参りました」


 家の中がしーんと静まり返った。両親は互いに顔を見合わせている。


「……え、あの、何かの冗談では?」
「いえ、冗談ではありません」


 戸惑う父に対して、ジャンは瞬時に切り返す。


「……千夜子、本当にこの人とお付きあいしているのか?」
「うん」
「いつから?」
「一昨日」


 チャコは正直に答えたが、相変わらず言葉が足りていない。両親は驚き目を見開いている。


「は?」
「あなた! これ結婚詐欺じゃないの?」
「確かに……君、帰ってくれるかな? 千夜子は話があるからこのままいなさい」


 ジャンが詐欺師扱いされ、チャコはおろおろとしたが、ジャンはそれでも堂々としていた。


「帰りません」
「なっ!?」
「付き合いはじめたのは一昨日ですが、私たちはもう五年近く想いあっているんです。訳あって彼女のそばを離れていましたが、その間もずっと千夜子さんのことを想っていました。彼女も同じです」


 自分たちのことを簡潔に話してくれるジャンを、チャコは尊敬のまなざしで見つめた。チャコ一人だったら、ここに到達するまでに随分と時間がかかっただろう。
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