ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「……本当なのか? 千夜子」
「うん。私から告白した。四年前に。私もずっと好きだった」
「千夜子、あんたそんなこと一言も言わなかったじゃない」


 告白成功したわけでもないのに、親に言えるわけがない。ずっと片想いをしていますとも言えるわけなかった。


「恥ずかしくて言えるわけない……それにジャンとはずっと会えなかったから……」
「「ジャン?」」
「あ、彼のこと、ジャンって呼んでるの」


 さすがは親だ。それだけ聞いたらジャン呼びについてはもう触れなかった。


「はあー。突拍子もなさすぎる……で? 離れていた理由とは?」
「声の病気を患っていて、その治療をしていました。ようやく克服できたので、彼女と再開できるように動きました」
「……そう。まあ、それは大変でしたね」
「いえ、彼女と一緒にいるためなら頑張れますから」


 両親の前だというのに、チャコはジャンのその言葉でうっかり頬が緩みそうになった。


「そうですか……はあ、二人が想いあっていることはわかりました。でも、結婚は認められない。まずは普通の恋人として過ごしなさい。見たところ随分若いようだし、そんな急ぐ必要ないだろう。それに千夜子、お前の夢だって今が大事な時期だろう?」


 父の心配も当然だ。今が大事な時期なのもわかっている。それでも、その上でチャコは彼の申し出を受けようと決めたのだ。父に何て伝えようかと頭をひねらせていたら、ジャンが間髪入れずに次の言葉を発した。
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