ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「……はあー。千夜子、お前はどうなんだ。お前も同じ気持ちなのか?」


 ジャンと父の勢いに何も言えずにいたチャコだが、父に優しい声で聞かれて、チャコは自分の想いを真っ直ぐに伝えたくなった。チャコの純粋な想いだけ知ってほしかった。


「うん。ジャンと一緒がいい。結婚はびっくりしたけど、でもすごく嬉しかった。ジャンが大好きだから」
「はあー、お前本当にわかってるか? お前がそんなんだから心配なんだよ……はあー、じゃあ、半年」
「一ヶ月半」


 ジャンは食い気味にそう答えた。一歩も引かない姿勢だ。


「……じゃあ、まずは三ヶ月様子を見よう。それでそのときにもう一度判断する。だめだと思ったら延長。これならいいだろう?」
「……わかりました」


 ジャンは渋々と言った様子で承諾した。


「千夜子。お前もだぞ? 家のこと何にもできないだろ? ちゃんと二人で生活できることを見せなさい。結婚の話はそれからだ」


 チャコは父のその言葉に大きく頷いた。


「それから、わかってると思うが順序だけは間違うなよ? それは二人の夢さえ遠のかせることだからな?」
「わかっています。子供のことはきちんと実績を作ってから考えます」


 父の言葉の意味を理解していなかったチャコだが、ジャンの言葉ですべてを察して真っ赤になってしまった。父も顔を赤くしている。母だけが楽しそうだった。
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