ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 それが約一週間前の出来事。恐ろしく密度の濃い時間だった。

 チャコはそれを思いだして火照りそうになる顔を手で軽く扇いで冷まし、ジャンと透子の会話に意識を戻した。



「夫婦デュオとしてデビューさせてほしいと思っています」


 入籍の話に驚く透子には構わず、ジャンはさらっと要望を言ってのけた。


「いや、夫婦って……」
「そういう需要もありますよね?」
「あなた、その需要に応えられるタイプに見えないんだけれど」
「大丈夫です。私はチャコのことなら、いつだって愛せますから。チャコ?」


 優しく呼びかけられて、思わずジャンのほうに顔を向ければ、ジャンはさも当たり前であるかのようにキスをした。あれだけしげさんに叱られたというのに、やはり反省していないらしい。チャコはこの状況にもう完全に思考停止して、身体ごとフリーズしてしまった。


「ちょっ!? T・P・O! (さか)ってんじゃないわよ、ったく……はあー、チャコ、あなたとんでもない人につかまったわね。これから大変よ?」


 今のチャコには透子のその言葉も耳に入らなかった。


「まあ、夫婦デュオとしての売り込みは前向きに検討しておくわ」


 そのあとはすぐにビジネスの話が始まったが、いつもとは違い、ジャンが隣にいてくれるからとても心強かった。
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