ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 結婚挨拶の騒動があったあと、チャコはすぐにジャンの家へと越してきた。すでにジャンが暮らしていたところだから、家具・家電は揃っており、チャコは自分の身の回りのものを持ってくるだけでよかった。

 越してきてすぐは二人きりの状況にずっとドギマギしていたチャコだが、ジャンがあまりに平然と距離を詰めてくるから、いつの間にかジャンと二人でいることが当たり前になっていた。



 一緒に暮らしてわかったことだが、ジャンは本当にハイスペックだった。家事も一人ですべてこなせてしまう。チャコが何もせずとも、ジャンが一人ですべてやってしまえるわけだが、チャコはそれに甘えるのは嫌だった。ジャンもちゃんとチャコにいろいろな役割を担わせてくれる。チャコもジャンも一緒に生活を営んでいきたいと思っていたのだ。だから、どんなにチャコの手際が悪かろうとジャンは辛抱強く見守り、チャコが成長できるようにたくさんのアドバイスをくれた。



 チャコは慣れないことを同時にやるのがとにかく苦手だ。家事の中でも料理がその最たるものだ。複数品目を同時に作ろうとすると必ずどこかがおろそかになる。それで結局すべてが上手くいかなくなるのだ。

 ジャンはそんなチャコを見て、まずは一つずつ手順通りに順番にやればいいと教えてくれた。今は効率なんか気にしなくていいから、一つずつ丁寧にやってみようとそう助言してくれたのだ。

 チャコはその助言通り、順を追って丁寧に作業してみた。すると、驚くことに、チャコの料理の腕はぐんぐんと上達していったのだ。効率のことを考えれば、まだまだ改善の余地はあるだろうが、それでも味は文句のつけようがないレベルにまで到達していた。



「ジャーン、ご飯できたよー」
「お、今日も美味しそう。チャコ、本当に上手くなったな」
「うん! ジャンが教えてくれたから」
「チャコの努力の結果だよ。ありがとな、チャコ」


 ジャンはいつもこうやって褒めてくれる。チャコの料理も美味しいと食べてくれる。だから自然と頑張ろうと思えるのだ。慣れないことをするのは大変だが、それでも今のこの生活を嫌だと感じたことは一度もない。毎日幸せでいっぱいだ。
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