ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「よし、じゃあ、続きやろうか」


 食事の片づけを終えると二人は作曲作業を始めた。二人のデュエット曲が必要ということで、ジャンに作曲の指令が下っていた。もちろんジャン一人で作曲できてしまうわけだが、ジャンがチャコの歌があるとインスピレーションが湧くと言うので、チャコもギター片手に参加している。


「ねえ、さっき料理してるときに思いついたフレーズがあるから聴いてくれる?」


 これはチャコのあるあるだ。何かをやっているときにふと思いつくのだ。チャコは少し前に思いついたフレーズを口ずさんでみた。


「うん、いいんじゃないか? じゃあ、こういう感じにしたら……」


 ジャンはさっとアレンジを加えて、違和感のない曲の繋がりにしてくれる。チャコはこれを何度も目にしているが、毎回魔法のように感じてしまう。


「すごい……やっぱりジャンにはまだまだ追いつけないや」
「そんなことない。チャコはその素晴らしい感性を大事にしたほうがいい。適材適所だよ」


 チャコは直感タイプの人間だ。基本的に思いつくままにやっている。一方のジャンは本来の才に加え、理論もしっかり学んでいるから、バランスよく聴き心地のよい曲が出来上がる。


「うん。でも、勉強はしたい」
「ああ。あとでな」


 チャコもちゃんと学びたいとジャンからいろいろと教わっている。そんなだから、ジャンとの日々は怖いくらい充実しているのだ。成長しながら二人で同じ目標に向かって歩んでいけるのが楽しくてたまらない。毎日希望に満ちていた。



 そんなふうに二人で暮らしていき、約束の三ヶ月後、二人は安達家からも結婚の許しを得た。

 最初はあれだけ反対していた父だが、成長したチャコの姿を見て、ジャンに感謝するほどだった。チャコは自分もジャンも認められたのがわかって、本当に本当に嬉しかった。
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