ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 さらに翌日の金曜日、また河川敷に来ていたジャンに、チャコはいの一番に聞きたかったことを尋ねた。本当は昨日すぐにでも聞きたかったのだが、昨日ジャンは河川敷に来なかったのだ。チャコは聞きたくて聞きたくてもうずっとうずうずしていた。


「ねー、ジャン。私のこと中学生だと思った?」

 
 問いかけてからジャンの表情を窺えば、ジャンは正解だとでも言うようににっこりと微笑んでいる。


「やっぱり! 思ったんだ。違うからね! 高校生だから!」


 ジャンは声は出さないままで、とてもおかしそうに笑っている。チャコはその様子にちょっと文句を言いたくもなったが、楽しそうなジャンを見ていると二人の仲が急に深まったような気がして、結局チャコも一緒になって笑ってしまった。



 その日もジャンの演奏に耳を傾けていれば、あっという間に日が暮れて帰る時間が訪れる。


「じゃあね、バイバイ!」


 チャコが手を振り、別れの挨拶をすれば、ジャンは何も言わずにただ微笑む。そして、チャコとは反対のほうへ歩いていった。
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