ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~

5. 聴かせて?

 デビューから二年、二人は人気アーティストの仲間入りを果たしていた。各地でのライブも精力的に行い、着実にファンも増やしてきた。


「ねえ、ジャン、これ見て?」
「何?」
「河川敷で会ってたって話した子、たけるくんからファンレターがきた!」


 あの少年とはだんだんと会う機会が減り、デビュー時にはもうまったく会わなくなっていた。だから、まさかチャコのことを覚えていてくれるとは思わなくて、こうしてチャコに手紙を送ってくれたことがとても嬉しかった。


「あー、チャコの演奏よく聴いてたっていうガキ?」
「ガキなんて言わないでよ。かわいかったんだから」
「そんな幼気な子供に、俺が天使とかって嘘教えてたんだろ?」


 ジャンにその話をしたときも散々からかわれた。言葉が足りないんだと言われ、何の反論もできなくて悔しかったのを覚えている。


「だってジャンは天使みたいにきれいだもん」
「天使は恥ずかしいからやめろ。で? 何て書かれてんの?」
「あのね、たけるくんもギター始めたんだって! なんかいいよね、こういうの。音楽で繋がってるみたい」


 手紙にはチャコとジャンに憧れて、ギターを始めたと書いてあった。自分がそういう憧れの対象になるだなんて、なんだかくすぐったい気持ちだ。


「そうだな。俺たちもいろんなやつらと音楽で繋がってきたからな」
「うん、そうだね。たけるくんともまた音楽を通じて会えたらいいな」
「会えるさ」
「だといいな。もう大きくなってるんだろうなー。当時は本当にかわいかったんだよ。結婚するか? なんて言ってくれて」


 当時のことを思いだして、チャコは思わず笑みがこぼれた。本当にかわいらしいプロポーズだった。
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