ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 ジャンはしばらく無愛想な顔をしていたが、チャコが話しかけているうちにその表情を緩めていった。しばらくすれば、ギターを取りだして演奏を始めたので、チャコは静かにその音を楽しんだ。客は他に誰も来なかったから、チャコはとっぷりとジャンの演奏に浸っていられた。



「チャコちゃん、またおいで。次はセッションしてるときにね。ぼうず、連れてきてやれよ?」


 ジャンは何も答えなかったが、拒否したわけでもなかったから、きっとまた連れてきてくれるだろうとチャコは期待しておくことにした。


「楽しみにしてます! また来ますね。しげさん、さよなら」



 日が暮れて二人は店を出ると河川敷に向かって歩きはじめた。自転車はジャンが押してくれている。


「素敵なところだったね。セッション聴けなかったのが残念だったな。また連れてってね?」


 ジャンはまた天使の微笑を浮かべている。これはきっと肯定の意味だ。きっとまた連れていってくれることだろう。
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