ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「それにしても、今日はクリスマス・イヴだってのに、こんなところにいるなんてまったく色気がないねー」


 しげさんがそう言うとジャンは眉間に皺を寄せて俯いたが、どうしてそんな表情をするのかチャコにはわからなかった。それよりもしげさんのクリスマスというワードにチャコは明日の予定を思いだして一人ワクワクとしだした。


「しげさん! 私、明日友達とクリスマスパーティーするんですよ! 一緒にケーキ焼くんです!」
「そうなのか。いいね、友達とクリスマスパーティー。青春だねぇ」


 そんな会話をして、しげさんと微笑みあっていれば、突然ジャンに腕をつかまれた。そのまま店のドアのほうまで引っ張っていかれる。


「え、ジャン!?」
「お、出るのか? 遅くまでチャコちゃん連れ回したらだめだからな」


 ジャンが何も言わずにそのまま店を出ていこうとするから、チャコは慌ててしげさんと山さんに挨拶をした。




「かわいいねー、あいつらは」
「本当に。彼の抱えているものが何かわからないけれど、救われていればいいと願ってしまいますね」
「だな」

 チャコとジャンが出ていくとしげさんと山さんはそんな会話を繰り広げていた。
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