ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
 二人をチャコの部屋に招いたその日、チャコの様子がいつもと違うからか、恵と由香は何かあったのかと心配そうに問いかけてきた。心配をかけたことを申し訳なく思う反面、その優しさがチャコはすごく嬉しかった。


「心配するようなことじゃないから大丈夫だよ。あのね、大事な話がある。二人とも聞いてくれる?」


 チャコの真剣な物言いに、恵も由香も驚きの表情を浮かべていたが、はっきりと頷いてチャコの言葉を待ってくれた。だからチャコは迷わずはっきりと宣言した。


「私、告白する」


 チャコの言葉がすぐには理解できなかったのか、二人は黙り込んでいて、部屋の中がしーんと静まり返った。ちゃんと伝わらなかったのだろうかと心配になってきたところで、恵に肩をがっと掴まれた。


「……えっ、マジで!? てっきりまだそのステージには立ってないもんだとばかり……成長したねー、チャコ」


 恵に頭を撫でられてなんだか小ばかにされているような気になる。


「恵、なんかバカにしてるでしょ」
「ごめん、ごめん。してないから」


 恵は手を合わせて謝っている。その様子に許してやるか、なんて思っていたら、由香が冷静な声で語りかけてきた。


「天使さんでしょ? 告白の相手は」


 チャコはまた肝心なことを飛ばしていたと気づいたが、由香はすでにわかっているらしい。


「うん。私、ジャンが好き。あのね、今度の夏祭りに誘って、そこで言おうと思ってる」
「いいじゃん。頑張れ、チャコ! チャコなら大丈夫!」
「私も応援する。頑張って」


 二人に応援されればとても勇気が湧いてくる。やはり二人に話してよかった。告白の決意もより固まるというものだ。

 しかし、チャコには拭いきれない不安もあって、優しい友人二人に思わずこぼしてしまった。

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