ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ねー、ジャン。知ってる? 私たちが出会って、もう一年経ったんだよ? めっちゃ早いよねー」


 ジャンも微笑んでいるからきっとその年月が過ぎ去ったことをわかっているのだろう。


「ちょっとは大人っぽくなったかな? もう中学生に見えない?」


 ジャンはおかしそうに身体を震わせたあと、チャコの頭をポンポンっと軽く叩いた。


「えー、それどっち……」


 不満そうな顔をしてみせれば、頬を優しく撫でられる。どういう意図でそれをしているのかはわからなかったが、それをされるとチャコは大人しくならざるを得ない。そのまま手の感触を楽しんでいれば、その手がゆっくりとチャコの腕に沿って下りていき、優しく手を持ち上げられた。それは少しずつジャンのほうに引き寄せられていく。そして気づけばジャンの口元にまで到達していた。

 初めてされるその行為に何をしたいのかわからず首を傾げてみせれば、ジャンはさらにチャコの手を引き寄せてそこに口づけを落とした。それは一度ではなく何度も落ちてくる。何度も訪れるその感触にチャコはもう沸騰寸前だ。


「っ……それは大人すぎるんじゃないかな……」


 そんなふうに言えば、ジャンはまたおかしそうに身体を震わせている。なんだかバカにされているような気もするが、チャコにとっては大人な接触が終わって、ほっとする気持ちのほうが大きかった。

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