ギター弾きの天使とデュエットを ~言葉を話さぬ彼に惹かれて、二人は同じ夢を見る~
「ジャンのギターが聴きたい。ねぇ、何か新しいやつ弾いて?」


 チャコは空気を換えたくてジャンに演奏を催促した。するとすぐにジャンのギターから聞き覚えのあるフレーズが流れてくる。ジャンはそのワンフレーズだけ弾いて、チャコを窺ってきた。


「カノンだ! それ好き! え、なんで今まで聴かなかったんだろう。ジャンが弾いたら、絶対きれいだよ。聴きたい! 弾いて弾いて!」


 チャコでも知っている大層有名な楽曲のはずなのに、ジャンのギターで聴くのは初めてだった。ジャンのギターがそのメロディーを奏でるところを想像しただけで、もうワクワクしてたまらない。チャコはジャンに期待のまなざしを送りつつ、その音楽が奏でられるのを待った。

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