あの日、桜のキミに恋をした
すっかり八方塞がりの俺は、久しぶりに一哉に連絡を取った。


実はアイツも高校には進学していて、今はバイト先の先輩と付き合っていると言っていた。


「由奈とエロいことしたいと思ってることに引かれないかとか、どう思われるかとかすげー気になって。そしたらなんもできなくなった……」
 

「大事なところで優しすぎるし不器用すぎるとこが康介らしいな」


笑われるのを覚悟して話したのに、一哉は俺の話をあっさり受け止めてくれた。


これが経験豊富な奴の反応なんだろうか。


俺にとってセックスはまだかなりの一大イベントだけど、一哉にとっては息をするみたいに普通のことなんだろう。


今までは相手にどう思われようと、俺がシたかったらするし、シたくなかったらシないってできてたのに。


彼女のの前では嫌われるのが怖くて自分の欲を表に出せないでいた。


「康介の言うことは分からなくもねーけどさ。今のお前は逆に自分のことしか考えてないよな。由奈ちゃんの気持ちガン無視じゃね?」


「それって……由奈もおんなじ気持ちかもってこと!?」


「それは分んねーけど、そうだとしても何もおかしくないぞって話。女の子にだってそういう欲はあるんだから」


そういう風には考えたことがなかった。


由奈も俺と同じように悩んでいる可能性もあるってことだ。


「……だとしたら、ちゃんと伝えて、向き合わなきゃだよな」


その日から俺は、そういうことが自然にできるシチュエーションを考えまくっていた。
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