甘い香りが繋ぐ想い
とりあえず、この家を出たい。早く独り立ちしたいと、高校卒業後は就職しようと考えていたが、世間体を気にする両親から、大学には進学しろと言われた。
進学しろと言っておきながら、学費は出さないと理不尽なことを言われ、困った真夢は瑠璃に相談した。

「真夢、一生懸命勉強しなさい。そして、私と同じ大学を受験するの。私が通ってた大学って、成績上位者は学費が全額免除だから。しかも、望めば寮費も無料。3人部屋でかなり古いけど」

「え!ホント?」

「本当よ。学費と寮費が無料なら、必要なのは生活費だけでしょ。それはバイトで何とかなるんじゃない?」

「うん!瑠璃ちゃん、教えてくれてありがとう」

「真夢、この奨学制度を利用できるのは、一般受験者のほんの一握り。生半可な気持ちじゃ絶対無理よ」

「うん、私、死に物狂いで頑張る」

「そうね、真夢だったらきっと大丈夫。頑張るのよ」

瑠璃は真夢にとって、本当の姉のような存在だ。
瑠璃がいてくれたから、今こうして寮生として大学生活を送っている。
針のむしろのような実家から抜け出ることができたのだ。
寮に住み始めてから、一度も実家には帰っていない。この先も帰るつもりはない。
真夢が家を出て以降、親も弟も、一度たりとも連絡をくれたことはなく、既に三雲家での真夢の存在は抹殺されているのだろう。

毎日毎日勉強にバイトと時間に追われる生活だが、苦痛に感じたことはなく、むしろ、生きる活力がみなぎっている。

ここまで導いてくれた瑠璃には感謝してもしきれない。
彼女には必ず幸せになってもらいたいと思っている。
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