冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
少しおどけてそう言う彼女に、日奈子は目を見開いた。

「駆け落ち……?」

「今回はその根回しのために帰国したの。実家はともかくお世話になった仕事関係の人にはなるべく迷惑をかけたくないもの。どうしたって不義理をすることにはなるだろうけど」

「駆け落ちということは、ご両親に反対されているお相手なのですか?」
 
口に出してから日奈子はしまったと思い口を閉じる。

ホテルスタッフとしては、少し行き過ぎた質問だ。

客から話すことを聞くのはともかくとして、こちからから踏み込んだことを聞くべきではない。
 
だが美鈴はとくに気にする様子もなく頷いた。

「正確にはまだ話をしてもいないけどね。……彼外国人なのよ。しかも特にお金持ちでも社会的地位の高い人でもない。私の仕事ですら、やいやいうるさくて三十五歳までには日本に戻って見合いをしろとうるさく言う両親が絶対に許してくれるわけがないのよ。だから……ね」
 
そう言って美鈴は少し寂しそうな目をした。
 
永遠の別れというわけではなくとも、しばらくは日本に戻るつもりはないのだろう。母親とも当分は会えないというわけだ。
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