冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
それ自体を母は喜んでくれているはずという確信が胸に広がった。
 
そして日奈子がそうなれたのは、紛れもなく目の前の彼のおかげなのだ。

彼の愛が、母を失い止まっていた日奈子の時計を動かした。モノクロだった日奈子の世界に、色を取り戻してくれたのだ。

「宗くん、私ね、宗くんに言わなくちゃいけないことがあるの」
 
日奈子の言葉に宗一郎が無言で頷いて、静かな眼差しで言葉の続きを促した。
 
その彼を真っ直ぐ見つめて、ドキドキと鳴る胸の鼓動を感じながら日奈子は、心に閉じ込めていた本当の想いを口にした。

「私は、宗くんのこと男性として愛しています。宗くんが、私のことを女性として好きになってくれた時よりもずっと前から。……私の初恋は宗くんなの」
 
一気に言って息を吐く。
 
宗一郎が綺麗な目を見開いた。
 
ホテルの裏で、抱きついて大好きと口走ったからある程度、日奈子の気持ちはわかっていただろうが、ずっと前からというところまで予想していなかったのだろう。

「それなのに、宗くんがプロポーズしてくれた時、男性として見られないなんて嘘をついてごめんなさい。傷つけてしまってごめんなさい。私が宗くんの気持ちに応えられなかったのは、これがあったからなの……」
 
そう言って日奈子はノートを彼に差し出した。
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