冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
「なんだ、あんた。いきなりこんなことしてどういうつもりだ⁉︎」

「それはこっちのセリフだ。彼女、嫌がってるじゃないか」

「だからなんだ! お、お前には関係ない!」
 
怒りを露わにする高木の胸元を、宗一郎が目を細めて睨んだ。

「なるほど。帰りたがっている女性を強引に引き止めて契約を結ばせる。それが大同(だいどう)銀行のやり方か」
 
宗一郎からの一撃に、高木がハッとして胸元につけている会社のバッチを手で隠した。

「くそ、まだなにもしてねえよ、大袈裟だな」
 
悪態をつき逃げるように去っていった。その背中が人影に紛れて見えなくなると同時に日奈子の身体から力が抜ける。

思わず座り込みそうになったところを宗一郎に支えられた。

「大丈夫か?」

「宗くん……」

「怪我はないな?」
 
日奈子の様子に鋭く視線を走らせて、異常がないか確認している。

「どうしてここに?」

「会合からの帰りだ。見間違いかと思ったが、念のため戻ってきてよかった」
 
肩を支える温もりに、日奈子は心底安堵した。

「家まで送る。車に乗れ」
 
そう言う彼の視線の先は、運転手付きの車が停まっている。社用車だ。

もちろん普段の日奈子ならその車で家まで送ってもらうなんてことは絶対にしない。
 
彼の運転手は皆口が固く外部にバレるなんてことはないけれど、ケジメは大事だからた。
 
でも今はとにかく気が動転している。

ばくばくと心臓は鳴ったままだし、脚に力が入らない。このままひとりで電車で帰る自信はなかった。
 
日奈子は素直に頷いた。
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