冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～
そこまで言われてようやく日奈子は、宗一郎の言いたいことに思いあたる。

「あ……そういう意味……」
　
呟くと、途端に頬が熱くなっていく。とても宗一郎の口から出た言葉とは思えなかった。

『男として見られるまで、手は出さない』
　
わざわざ約束するということは彼は手を出したいと思っているということか。

「そんな心配をしたわけじゃないんだけど……」
　
もごもご言ってうつむくと、それを見た宗一郎が眉を寄せる。

そして眉間を指で押さえて、はーっと深いため息をついた。

「男と密室でふたりで過ごすのに、まったくそういうこと考えなかったのか……。あまりにも危機感がなさすぎる……」

「危機感って……！　だって相手は宗くんじゃない」

「ああ、そうだ」
　
宗一郎が眉間の指を離して日奈子を見た。

「日奈子を愛してると、はっきり口にした男だ」

「つっ……！」
　
その言葉と視線に日奈子は言葉に詰まってなにも言い返せなかった。
　
鼓動がドキドキとスピードをあげていく。顔と耳まで熱くなって真っ赤になっているのが自分でもよくわかった。
　
宗一郎が柔らかく微笑んで、日奈子の頬にそっと触れた。

「怖がらせるつもりはない。さっき言った通り、俺は日奈子がいいと言うまで絶対に手を出さないよ。だけどまったく前と同じじゃ意味がないからな、少しは意識を変えてもらわないと。なにも予定がないなら俺に時間をくれ」
　
頬の温もりから感じる甘い痺れに、もうなにも考えられなくなってしまう。
　
——今日一日だけだから。
　
日奈子は自分に言い訳をしてそのままこくんと頷いた。
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