オイスターガール

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「俺この歌手もそんなに有名じゃないけど好きなんだよね!カラオケで歌うとマジ最高なんだよ」
 目をキラキラさせて彼は言う。
「あ、ごめん嫌味な意味ではないからね」
 
私は家の外に出たら喋ることが出来ないのでカラオケというものは行ったことがなかった。
 でも家でなら歌うことができる。
 
「いつか人前で話せるようになるといいな!」
 一条くんは優しくフォローしてくれた。
 
私はカラオケに行ってみたい!と紙に書いて一条くんに見せた。
「まじ?本当に?」
 と言って衝撃を受けたような表情をしていた。
 私はカラオケというものに行ったことがなかったので行ってみたい気持ちと、一条くんの歌を聞いてみたいという気持ちがあった。
 
そして紙に一条くんの歌を聞かせてと書いた。
「おうけい、わかった!期待はするなよ!」
 一条くんは太陽のような笑顔で言った。

「安西さん今日の放課後空いてる?」
 私は放課後は、基本家に帰るだけの用事しかないので、
 空いてるよ!と紙に書いて答える。

「よし決まりだな、今日カラオケ行こう!テンション上がるわっ!」
 嬉しそうな一条くんを見て私もなんだか嬉しい気持ちになる。
 
 
 その日の放課後、二人でカラオケへ行くことになった。

話を聞いてみると、一条くんは学業優先なので部活はやっていない、だから放課後は基本空いているらしい。
 
今日は勉強の息抜きだ!と言っていた。
 
 放課後校門前で待ち合わせ予定だ。

私は掃除係が楽な玄関なので早く終わり、校門前で待っていた。
 すると10分ほど遅れた後に一条くんがやってきた。
 すると一条くんは
「今日のトイレこの世の終わりのような汚さだったわ!まじ終わってる!これでも頑張った方なのに、汚いからってやり直しさせられた!」
 と愚痴を吐いていた。
 
 トイレ掃除はハズレな係だ。
 一条くんは今日は災難だったみたいだ。
 

カラオケ屋さんは学校から、15分くらい歩いたところにある。
 すると一条くんが
 「カラオケの前にコンビニで買って、こっそり持ち込みしよう」
 と悪い顔で言ってきた。

私はそれに賛同し、首を縦に振る。
 
 この人は表情が沢山あって、カメレオンみたいだと思った。

 近くにセブンイレブンがあった。
 
 コンビニでコーラ、ポテチ、チョコなどを買ってカバンに詰めたらバックが二人とも一杯になった。
 
店員さんは勉強道具でパンパンだと、思ってくれることを願う。

 カラオケ屋さんにつく。

 すぐに店員さんが出てきて。
「何名様ですか?」
 そう聞かれたので一条くんが答える。
 
「2名です。2時間でお願いします!ドリンクはいりません!」

 店員さんは一瞬びっくりしたような顔をした後、パンパンのバックをじっと眺めていたが、何も言わなかった。

 そして私たちは無事に、お菓子とジュースを持ち込むのに成功した。

 私たちの部屋は3番みたいだ。

 通路を歩いてると
 「持ち込み作戦大成功!」
と一条くんが悪い笑みを浮かべた。
 
 扉をあけて中に入ると中はそとの気温と違い冷房が効いていて涼しかった。

 部屋に入るとすぐに一条くんはタブレットを操作し曲を入れた。
 
「では俺の十八番歌いまーす!」
一条くんが大きな声で宣言した後、部屋を暗くし、あーあーとマイクをテストしている。
 
 少しの静寂の後イントロが流れた
 
 この曲はTWO OK ROCK のMis Youだと少し聞いてわかった。
 イントロが少し長めの曲だ。
 
 歌が始まると一条くんは最初から全力で熱唱していた
 
 一条くんの歌は正直言うと上手くない、だけど私の心を踊らせる、力強くまっすぐな歌声だ。
 
 私はずっと手を叩いて曲に乗っていた。

 一曲目が終わった。

 一条くんはふぅと少し疲れた表情をしながらコーラー開けて一口飲んだ。

 そしてキメ顔で
「次は福山英孝のモノマネしまーす」
  と本人そっくりな太く低い声で言った。
 
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