その狂愛からは、逃れられない。
両親に合わせる顔が無い。それに光の顔など見たくもなかった。
好きという気持ちより、無理矢理犯されたという気持ちの方が大きかった。
もう、どんな顔をして光に会って仕事をすればいいのか、全くわからなかったのだ。
仕事に関しては体調が悪いと言って一週間ほどお休みをもらった。そして三日目の真夜中に、最低限の荷物を持って飛び出したのだった。
行く宛など無かった。けれど、このまま三芳家にいるよりは確実にいいと思った。
スマートフォンは自室に置いてきた。両親宛に書置きも残しておいた。バレるのは時間の問題だから、それまでに遠くに。できるだけ遠くに行こう。
闇夜に消えるように出て行った蓮華に、誰も気が付くことはなかった。
──光が異変に気が付いたのは、しばらくしてからだった。
蓮華を抱いたこと、縁談をめちゃくちゃにしたこと。そして蓮華が自分を避けるように休暇を取得したこと。
つまり自分を意識しているのだと解釈した光は、蓮華の頭の中を自分でいっぱいにできた気がして、言いようのない優越感と満たされた支配欲にとても満足していた。
しかし、少し休みが多すぎるのではないかとは思っていた。
そんなある日。メイド長に言われたのだ。
「……蓮華が? いなくなった?」
「はい」
それは、光のプライドを傷つけるには十分すぎた。
「いつからだ?」
「それが、わからないのです。スマートフォンが部屋に置いてあったようで、連絡も取れません」
「あいつの両親は?」
「何も知らないと、泣き崩れていました」
雇い主である自分が、何も知らなかったからだ。
「……探せ」
「……最善を尽くします」
光は舌打ちをして、部屋にあるゴミ箱を思い切り蹴り上げた。
中に入っていたティッシュのゴミが宙に舞って床に落ちる。
光はそれさえもイライラした様子で、寝室に戻って行った。