その狂愛からは、逃れられない。
──それから、早いもので四年の月日が経過した。
蓮華は、必死に働いていた。
「早くそこ片付けて! 急いで!」
「はい! すみません!」
ここは三芳家からは遠く離れた内陸県の温泉地。
その中にある一つの老舗旅館で、蓮華は住み込みで働いていた。
四年前、夜逃げ同然で逃げ出した蓮華は、ありったけの貯金を全ておろして電車に飛び乗った。
行く宛もなく電車に揺られること数時間。着いたのはこの温泉地だった。
死んだような目をして歩いていたからだろうか。今の旅館の女将と偶然出会い、拾われたのだった。
今まで専属侍従としてメイドをしていた身としては、旅館で働くのは苦でもなんでもなかった。もちろん体力仕事だし、大変なこともたくさんあるけれど。
仕事終わりに浸かる温泉は格別だ。
「蓮、あがっていいわよ」
職場では、呼びやすいように"蓮"と呼ばれている。
シンプルでわかりやすくて、この呼び方が気に入っていた。
「ありがとうございます。お疲れ様です」
「お疲れ」
女将に頭を下げてから、急いで着物から私服に着替えて旅館を出る。
時刻は午後三時。旅館はこれからが一番忙しくなる時間帯。しかし、蓮華はその時間は基本的にシフトを入れていない。
それには、ある理由があった。
蓮華が向かった先は、温泉地にある唯一の小さな保育園。